世界三大漁場の三陸沖を拠点に持つ港町、気仙沼。
1年を通して多種多彩な魚が水揚げされ、遠洋漁業の基地として造船業から水産加工まで幅広い水産業でにぎわう街ですが、そんな気仙沼で、今年の春に新たに設置された自動販売機があります。
「日本初」という触れ込みで売られているのは、イカの塩辛。
「昨年からのコロナの影響がありまして、売り上げも落ちてしまったので、どういうふうに回復したらいいかな、と考えた時に、非対面というところ、本当は自前でお店を作ってやりたいなというところが最初はあったんですけど、思い切って塩辛でも自販機でやってみようかな、と思いまして設置しました」
と、話してくれたのは、これまで観光地のお土産物屋などでの販売がメインだった「波座(なぐら)物産」の専務・朝田慶太さん。新型コロナウイルスの影響で、観光地に人が行かなくなってしまい、売り上げが落ちたところで、通販サイトの立ち上げと一緒に考え出したのが、自社商品・イカの塩辛を自動販売機で売るという驚きの発想でした。
工場で製造する出来立てのイカの塩辛が、冷蔵の状態で24時間いつでも購入できるとあって、買ってみたくなる方も多いようです。
実際に、我々が取材している間にも、数組のお客さんが買いに来ていました。
「反響は、すごくいいですね。『え、こんなところにこんなのあるの?』とか、『うちの県にも置いてほしい』とかいう話もありました」
「この塩辛は、本当に手間のかかる塩辛で、一番の特徴は1回イカを一夜干しにして旨味を凝縮させて、それをイカの腑に漬け込みをして、たるで約1か月くらい熟成させて、さらにそれを調整をして1か月くらい寝かせて。原料から製品になるまで2か月かけて作る塩辛です」
波座物産のイカの塩辛は、製造工程に手間も惜しんでいませんが、イカはスルメイカのみを使用し、まろやかで濃厚な味わい。特に、杉樽に漬け込んで熟成させた塩辛は、杉が余分な水分を吸ってさらに旨味を閉じ込めるので、舌触りも違います。塩辛だけで何種類かあるので、それも何度も買いに来てしまう理由かもしれません。
「この自販機を観光施設だったりとかに設置したいなという考えはありましたけれども、気仙沼の街に来てもらえれば良いかなぁと思っています」
やみくもに設置台数を増やすのではなく、まずはしっかりと、工場のある気仙沼で認知してもらい、興味をもって買いに来てもらうことで、海辺の街に活気が戻ることを願っているそうです。美味しいので、遠くの知人・家族へのプレゼントなどにも最適です。