「海洋酸性化」ってご存じですか?
海洋酸性化は、⼆酸化炭素が海⽔に溶け込むなどして⽔質が酸性化する現象です。
特にカキやホタテなどの⾙類、エビ・カニ類、ウニといった炭酸カルシウムで殻をつくる
海洋⽣物の成⻑を阻害する(⽣物が殻を作りにくくなる)ことが危惧され、
進⾏すれば漁業に甚⼤な被害をもたらす可能性があります。
現在、⼈為起源による⼤気中の⼆酸化炭素が世界的に増加していることから、
海洋酸性化の更なる進⾏が懸念されています。
海洋酸性化について⽇本沿岸での実態把握や、対策・適応策の検討が不⼗分であったことから
⽇本財団とNPO法⼈⾥海づくり研究会議は、⽇本沿岸域での実態や漁業に及ぼす影響把握を⽬的として
2020年4⽉に「海洋酸性化適応プロジェクト」を開始。
3⽉17⽇に記者発表会を開催し、
国内⽔産業において重要な養殖対象種の⼀つであるカキ養殖に焦点をあて、
国内3地点(宮城・岡⼭・広島)で約1年半にわたって実施してきた定点観測データの
分析結果や実際の影響、温暖化シナリオに応じた酸性化影響の将来予測などを発表しました。
観測データを分析した結果、マガキに影響を及ぼす可能性のあるレベルの数値が、
カキの養殖海域において複数回、初めて観測されました。
⼀⽅で、カキ浮遊幼⽣の異常形態やへい死などの直接的な被害は確認されず、
現時点では漁業に被害を及ぼすまでには達していないと判断されました。
また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の温暖化シナリオに基づいて将来予測をしたところ、
⼈為起源の CO2 排出量の⼤幅削減に取り組まなければ、
今世紀末までに海洋酸性化がマガキ養殖に深刻な影響を及ぼす可能性があることが⽰唆されました。
マガキ養殖をはじめとする漁業に対するこれらの深刻な影響を回避するため、
また、海⽔温上昇、海⽔の貧酸素化、貧栄養化など、
他の海洋問題が相互作⽤する複合的な影響も懸念されることから、
気候変動の緩和策と適応策を両輪で進める必要があることが発表されました。
日本財団の笹川陽平会長は、
「『カキの殻が最近薄くなっている』といった漁業者の声を受け、
⽇本財団では、エビデンスやデータの収集が必要と考え、
海洋酸性化の実態把握を⽬的としたモニタリングを開始した。
⼿遅れになる前に、漁業関係者や研究者と連携しながら、対策を検討していきたい」
と語っていました。
「海洋酸性化適応プロジェクト」では
今後、さらなる実態把握、対策・適応策を検討していくそうです。